子宮がん検診・精密検査

 子宮頸がんはHPVが原因で、ゆっくり癌化するものです。癌の前段階である異形成(上皮内腫瘍)で発見することにより、外来手術等での治療が可能です。子宮頸がん検診は癌を発見するためではなく、癌の前に発見するものです。SEXの経験がある女性は少なくとも2年に1回は受けて頂きたいと思います。

 検診で異常がでると驚いてしまいますが、別にがんと言うわけではありません。ここ数年、子宮頸癌の分類や診断方法に変化があります。
子宮頸癌は正常から、上皮内腫瘍1(上皮内新生物1、軽度異形成)、上皮内腫瘍2(上皮内新生物2、中等度異形成)、上皮内新生物3(高異形成、上皮内癌)と順番に進行して所謂「がん」である浸潤癌となります。現在は上皮内癌は子宮頸癌には分類されていません。
また、軽度異形成では正常化することが多いのです。ですから、がん検診で異常がでても、慌てないで精密検査をすることが必要です。精密検査は、コルポスコピーと言う器械を使って病気の場所を見つけて、一部採取して病理検査に出します。その結果で、経過観察から治療が必要なものの診断をします。この診断にも今はHPVDNというものも使用されています。異形成や上皮内癌の治療には、子宮頚部切除術と言う外来手術でほとんどの方が十分で、必要な場合でも4日間の入院で行えます。

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新しい細胞診断判定

通常子宮がん検診と言うと子宮癌のうちの頚癌の検診で、子宮頚部の細胞を擦って採取する細胞診断で行われます。子宮頚癌はHPVと言うウィルスが引き金となり、正常から軽度、中等度、高度の異形成を経て上皮内癌、浸潤癌と時間をかけてなることがわかっています。細胞診断は、この段階を推定するもので、その結果は長らく日本ではローマ数字のI(イチ)からV(ゴ)で表されてきました。しかし、この表現は日本固有でHPVウイルスの関与や新しくなってきた治療についての考えと相関しないとのことで、新しい細胞診の報告様式ができました。癌の心配が全くない場合を陰性とし、軽度異形成と考えられる場合軽度扁平上皮内病変、中等度異形成から上皮内癌までを高度扁平上皮内病変、浸潤癌が考えられる場合を扁平上皮癌や腺癌と表現します。その他に形が変わっているが明確に異形成と言えない場合意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)、高度扁平上皮内病変を除外できない異型扁平上皮細胞(ASC-H)という分類もできています。

意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)

新しい細胞診断の表現で、意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)と言うものがあります。これには炎症やホルモン変化などにより細胞(正常あるいは異形成細胞)に影響が及んでいて判定が困難な場合や異形成細胞が少なく異形成と診断できない場合などがあります。全細胞診の約5%位と言われていますが、もう少し多いという報告もあります。
頚癌にはHPVというウィルスが関係しているので、この判定の場合には細胞変化の場合にHPVがいるかどうかを調べて、異形成の可能性があるか判明すると考えられています。もし、HPVDNAが陰性であれば、1年後の細胞診での経過観察で良いことになり、陽性であればコルポスコピー検査が必要となります。ただ、HPV陽性だからと言っても必ずしも異形成であるという訳ではありません。だいたい半数がHPVDNA陽性になると考えられています。このHPVDN検査は2010年4月より健康保険で行えるようになりました。

コルポスコピー

子宮頚部の異形成と言っても、子宮頚部全部が異形成でない場合がほとんどです。また、軽度異形成や上皮内癌までが混在することもあります。そこで、この検査が必要となります。子宮頚部に光をあてて拡大する機械で、薄めた酢酸を作用させておいてからみると、病巣の範囲が解ります。病巣に見える部分をマッチ棒の頭くらいの大きさで専用の器具で生検して病理検査に提出します。この病理の検査結果によって治療方針を決まります。
また、病理検査で軽度異形成や中等度異形成の場合はHPVDNAの型判定で治療方針を決めることが、健康保険で行えるように2011年11月からなりました。

治療

現在、高度異形成・上皮内癌とHPVの型判定で特にハイリスクのHPVが陽性の中等度異形成が治療対象と考えられています。軽度異形成は自然治癒の割合が高いため、治療の必要はありません。治療法は、子宮全摘出術の必要は必ずしも必要とせず、病変部分のみにたいする治療で十分と考えられています。これには現在レーザー蒸散法、子宮頚部切除術と呼ばれるLEEP法と円錐切除術があります。
蒸散はレーザーなどで病変を焼くので、外来手術であり術後も楽であるメリットがありますが、病理組織的にどのような病変であったかを調べることができないデメリットがあります。
LEEP法は、特殊な電気メスで子宮頸部をドーム状に切除する方法で、局所麻酔で行う外来手術であり入院を必要としません。当院ではレーザー蒸散とLEEP法で切除する部分は病巣ギリギリとし、それにレーザー蒸散を追加して、より完全になるようにしております。ただ、円錐切除法と同様に、術後1週間以上後に傷から出血する方もいらっしゃいますし、通院も必要です。
微妙な組織学的判定に難しい場合がありますので、浸潤癌が疑われる場合などは円錐切除をする必要があります。どちらの方法でも、術後のきちっとした検査などが重要になってくることは言うまでもありません。
手術の方法については、手術のページをご覧ください。

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