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妊娠検査薬の誤解と、正しい使い方のポイント:産婦人科からのアドバイス

日々診療していると、妊娠検査薬にまつわる誤解や誤ったネット情報があると感じでしまいます。妊娠検査薬は妊娠の早期発見や家庭での簡易な検査に役立つ、素晴らしいツールですが、正しい知識なしに使用すると混乱が生じることもあるでしょう。この記事では、妊娠検査薬に関する誤解を解き、正しい使い方のポイントを詳しく解説します。

目次

不正確な情報

  1. 薬物やサプリメントを摂取したことが妊娠検査薬の陽性反応を引き起こすことがある。: ほぼ間違いです。不妊治療にしようされるHCG注射も生理予定日1週間後では影響は出ないでしょう。
  2. 陽性反応が出たら必ず妊娠している。妊娠反応が陽性であっても偽陽性があるため妊娠確定ではない。: 妊娠検査薬の陽性反応となるとほとんどの場合妊娠です。ただ、正常妊娠でない場合があること、稀ですが偽陽性の可能性もあることを知っておくべきです。
  3. 妊娠検査で陰性であったら必ず妊娠していない。: 正確ではありません。偽陰性があるので、注意が必要です。検査のタイミングであることが多いので、1週間後に再検査をしてみてください。
  4. 妊娠検査薬は、ラインの色や太さで妊娠の週数や胎児の状態がわかる。: 間違いです。妊娠検査薬は、尿中のhCG濃度によってラインの色や太さが変わることがありますが、それは妊娠の週数や胎児の状態を反映しているわけではありません。ラインの色や太さは、尿の量や時間帯による濃度、使用した商品によっても異なります。妊娠検査薬では、ラインが出たか出なかったかだけで判断することが重要です。
  5. 水を飲んだ後に検査しないといけない。検査薬を使用する前に十分な尿量を確保するために水を飲む必要がある。: 尿量が少なすぎると検査できなかったり、不正確なんですが、水を多量に飲むと尿が薄くなって偽陰性がでやすくなります。早めの診断には早朝尿を使用しましょう。
  6. 月経予定日の1週間前からフライング妊娠検査は可能である。:  日本で正式販売している検査薬で1週間前からは無理です。生理予定日の2-3日前で陽性が出る可能性はあると思います。ただ、上にも書いてありますが、正常妊娠が超音波で確認できるのは、生理予定日の1週間後となる5週からです。
  7. フライイング妊娠検査では、反応が弱いので、判定時間が過ぎてからもしばらく様子見て陽性となる場合もある。もしくは、陽性反応が出るまで待たないといけない。: フライイング検査であっても判断時間は守りましょう。陰性だったら、生理予定日の1週間後に再検査してみてください。
  8. 陰性だった妊娠検査薬は再利用できる。: 一度使用した検査薬を水で洗って再利用できません。
  9. 妊娠検査薬は、ラインの色や太さで妊娠の週数や胎児の状態がわかる。: 妊娠検査薬の結果は、単に陽性か陰性かを判断するためのものであり、週数や胎児の状態を正確に示すものではありません。

妊娠検査薬の原理と仕組み

 妊娠検査薬は尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモンを検出します。受精卵が着床し始めると、将来胎盤となっていく胎児が入る袋(胎嚢)成されはじめ、その一部の絨毛細胞から、HCGが分泌されます。こ女性の体内でhCGホルモンが増加し、尿中に排泄されます。このホルモンを検出することにより妊娠と診断できます。妊娠が進行するにつれて、胎盤から分泌されるhCGホルモンの量が増加します。これを検査薬の特別な抗体が検出し、陽性または陰性の結果を示します。テストラインとコントロールラインが表示されることで結果が判断されます。テストラインが表示されれば陽性、コントロールラインのみが表示されれば陰性となります。

妊娠検査薬の正しい使い方

検査を行う時期

 hCGは妊娠3週の後半より分泌され始めます。そこで一定の濃度になると検出されます。一般的に、通常の妊娠検査薬では、hCGが約25 mIU/mLから50 mIU/mLの範囲で検出されることが多いです。妊娠4週となればほとんどの方で陽性となります。妊娠4週というのは排卵日から2週間後です。妊娠検査薬の説明書の生理予定日は排卵日から2週間目です。28日周期のかただと前の月経から4週間後ですが、月経周期35日のかただと前の月経から5週間後となります。月経管理アプリででる予定日は月経周期の平均から算出しています。ですから誤差があり排卵後2週間と限りません。また、hCG値は個人差があり、尿中であれば尿の濃度にもよります。ですから通常の妊娠検査薬の説明書には生理予定日の1週間後に検査をと書いてあり、生理予定日の次の日にでても変ではありません。もう1点大事なのは妊娠4週では超音波で胎嚢が認められず5週で認められますので、正常妊娠の確認は5週以降となります。

朝の最初の尿を使用

 尿中のhCGホルモンの濃度は朝に最も高くなることがいため、朝の最初の尿を使用することが推奨されます。

使用方法の指示に従う

 各製品には使用方法が記載されています。尿を反応させる時間などは製品によりちがいますので、必ず指示に従い、正確な結果を得るために慎重に行いましょう。

結果確認のタイミング

 妊娠検査薬は妊娠反応の判定すべき時間が記載されています。これを守ることは重要です。指定時間以内に反応が認められた場合は陽性で良いのですが、指定時間に再度判定して確定しましょう。遅すぎる場合、正確な結果が得られない可能性があります。時間が経つと、尿中のhCG濃度が変化したり、検査窓に蒸発線という薄いラインが出たりすることがあります。これらは偽陽性の原因になることもあるので、説明書に記載された検査時間を守ることが大切です。

偽陽性

 妊娠していないのに陽性反応が出ることがあります。これを「偽陽性」と呼びます。
偽陽性の原因としては以下のものが考えられます。

  1. 使用法の誤り:結果確認のタイミングが規定時間より長くなった場合
  2. 不妊治療で行うHCG注射の影響、注射後約1週間で血中よりほぼなくなるはずなので、月経予定日の1週間後であれば影響はないが、早く検査した場合は影響出る可能性があります。
  3. 高度の蛋白尿や糖尿の場合も偽陽性がでる場合があります。
  4. 流産後や人工妊娠中絶後はHCGが低下するまで時間がかかりますので、しばらく陽性となります。特に人工妊娠中絶施行週数が8-12週の場合はHCGが非常に高いので検出感度以下になるのは3週間後以降になる場合もあると考えられます。

偽陰性

 妊娠があるにもかかわらず陰性反応が出ることがあります。これを「偽陰性」と呼びます。偽陰性の原因としては以下のものがあります。

  1. 検査の早すぎるタイミング:検査した時期が受精後2週間経過していない
  2. 尿の希釈:尿が出ないので水を多く飲んで尿量が増え尿が希釈されている場合
  3. 尿中HCGが高すぎる場合:絨毛性疾患ではHCGが高くなるので、そのために偽陰性が生じる場合があります。ただ、生理予定日1週間後位ですとそれほど高値ではないので問題ないと思いますが、そこから日にちが経つと急激に上昇するので偽陰性となる可能性はあります。
  4. 不正確な使用:妊娠検査薬が古い場合などです。使用期限に注意しましょう。

早期妊娠検査薬

 通常の妊娠検査薬は第2類医薬品として販売されており、hCGが約50 mIU/mLから200 mIU/mLの範囲で検出されることが多いようです。書き方が曖昧なのは明瞭なデーターが調べた範囲では提示されていないかったからです。実際の臨床の場で感じるのはもう少し低濃度から検出されるようです。
 今回調べた範囲では25単位から検出できる早妊娠検査薬が医薬部外品として販売されていました。ネットではそれより良いものがあると書いてある記事がありましたが、多くは輸入品で日本で医薬部外品や第2類医薬品として届けられたものではありませんでした。安いという利点はありますけど、お薦めしません。
 早期妊娠検査薬は、妊娠の予定日の数日前から使用できることがありますが、この段階ではまだ尿中のhCGレベルは比較的低い可能性があります。そのため、検査の正確性を高めるためには、朝の最初の尿を使用することをお薦めします。ただし、hCGの濃度は個人差や妊娠の進行具合によって異なるため、すべての場合で早期妊娠検査薬がすぐに正確な結果を提供するわけではありません。
 多くの方の場合通常の妊娠検査薬の代わりに、早期妊娠検査薬を使用することは意味がないでしょう。昔々体外受精を勉強しに行った有名なクリニックでは受精卵を戻した1週間後からHCGを隔日で測定してました。これは体外受精が上手くいかない着床障害があるかどうかを調べるとのことでした。HCGが上昇すればその後化学的流産が生じても着床障害がないと考えられます。超音波で正常妊娠かどうか診断できるのは5週以降ですので、月経予定日の1週間後の検査が良いと思われます。

まとめ

 妊娠検査薬は正しい知識と使い方で、妊娠の早期発見や確定診断に役立つ素晴らしいツールです。正確な情報を把握し、誤った情報に惑わされずに適切に使用することが大切です。

妊娠検査で陰性

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