妊娠中の食事-産婦人科医が良く聞かれる7つの質問-

お母さんの妊娠中の食事は赤ちゃんに影響が出ます。食事について日常診療でよく聞かれる7個の質問について、書いてみました。バランスのとれた食事を楽しんで取ることが一番ですね。

1.刺身、生寿司は食べてはいけないと言われましたけど、食べてよいでしょうか。

 食べてよいと思います。生魚が良くないと言われるのは、食中毒、アニサキスという寄生虫、魚に含まれている可能性がある水銀等の影響の3つの理由だと思います。
 食中毒については、妊娠してない方でも大変ですが、妊娠していると悪化するということもないし、胎児への影響もないと考えられます。
 アニサキスは魚の寄生虫で、食べてしまうと胃粘膜に潜り込むので激痛が生じ、胃カメラで取る必要あります。現在は鎮痛剤をのんで、激痛を我慢し続ければ大丈夫というはなしもありますが、一般的ではありません。当然、妊婦さんだから重症化するということではないですし、胎児への影響もありません。アニサキスは、サバ、イワシ、カツオ、イカ、ヒラメ、カツオ、サケなどに多くいて、あらゆる魚に居る可能性があります。アニサキスは魚が生きている時は内蔵にいて死んだら筋肉に移動します。ですから避けるためには直ぐ内蔵を取り出せば良いのですが、通常流通している場合は無理ですね。これができるのは自分で釣った場合だけでしょうね。冷凍と加熱で死にますが、酢や塩では死にませんので最近スーパーで見かける刺身用のサバを丸々買ってきてしめ鯖を作ろうとかする場合はご注意を。私は魚を自分でさばいて刺身にするときは、柵にした時点で光に透かして見て、刺身を透明な更に盛って裏から光を当てチェックしています。アニサキスのリスクは非妊娠時とは変化がないので、食べてはいけないということにはなりません。アニサキスは-20度で24時間冷凍するといなくなっているので、冷凍したものを使っている場合には心配ありません。高級店が安全ということは逆にありませんね。
 含まれている水銀の問題もさして神経質になる必要はないと思います。実際は水銀が含まれていて問題となる魚の種類は少ないのです。長く生きている魚マグロやキンメダイなどの魚は水銀が多く、極端食べると胎児への影響があるということです。1週間に1回位刺身を食べても問題ありません。詳しくは厚労省のページでご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdf

2.タバコは本数が少なければ大丈夫でしょうか、電子タバコなら大丈夫でしょうか。

 喫煙は妊娠中に絶対やめて頂きたいものです。流産、早産の確率も上昇しますし、赤ちゃんの体重が軽い場合が多くなります。妊娠中は1日数本の喫煙でも影響があると言われ、とくにヘビースモーカーと言われている人の赤ちゃんは平均450g軽くなると言われています。そして受動喫煙も影響があると言われています。ですから本数を少なくすればリスクが多少軽減しますというだけです。それから電子タバコの影響は結論がでていません。電子タバコの方が胎児への影響が少ないという論文もありますが、煙中の物質は余り通常の紙巻きタバコと違いがないようなので、理論的に説明できていないのと、こういうものは多くの事例の積み重ねですから電子タバコは大丈夫ということはありません。妊娠初期に禁煙すると赤ちゃんへの影響はないと言われていますので、妊娠がわかってからは禁煙をしっかりしましょ

3.妊娠が解らないうちにお酒を飲んでしまいましたが、大丈夫でしょうか。妊娠中は少しのお酒も飲んではいけないのでしょうか。

 お酒は妊娠が解らないうちに数回飲んだ位では心配ありません。でも妊娠中はお酒を飲まないようにしましょう。でも、妊娠中に数回わずかな量のお酒を飲んだから赤ちゃんへの影響があるということではありません。飲酒をやめる必要があるのは、赤ちゃんに奇形や中枢神経異常が常習的に飲酒しているお母さんから生まれているからです。週に数回多くの量(ビール350ml 5本相当)を飲酒していたお母さんの赤ちゃんに中枢神経障害が認められた報告がある一方、少ない量でも生じた報告もあるようです。量も問題ですが、常習性が問題となるようです。妊娠判明前に数回飲酒した場合は、心配の必要はありませんが、それ以降はやめて頂いた方が良いでしょう。なかなか辞められない場合はアルコール依存症の心配があるかもしれません。

4.コーヒーやお茶は飲んでよいでしょうか。

 コーヒー、緑茶、紅茶等にはカフェインが多く含まれています。カフェインは胎盤血流を減少させて赤ちゃんが小さめになる可能性があるとのことで、取り過ぎに注意しましょう。日本の基準はないのですが、外国では200-300㎎が1日の影響がない摂取量となっています。1杯を200mlとすると、コーヒー1杯120㎎、紅茶1杯60㎎、緑茶とほうじ茶1杯40㎎が目安ので、1日数杯飲むのは大丈夫でしょう。カフェイン量はお茶の入れ方で変わるので、売られているものはどうでしょう。500mlのペットボトルの緑茶や紅茶は少ないもので50㎎、多いものは120㎎のようです。烏龍茶も同様です。缶コーヒーは130㎎から208㎎と少しばらつきがあります。

5.焼肉は食べて良いでしょうか。

 食べて良いのですが、妊娠中は肉をしっかり焼く必要があります。生肉にはトキソプラズマという寄生虫がいる可能性があり、これに感染すると胎児に障害が生じる可能性があります。ですから、しっかり火を通せば大丈夫です。ただ、焼肉は塩分摂取が多くなりがちなので、食べ過ぎには注意が必要です。

6.生ハムやチーズは食べて駄目とかいてあったのですが。

 この話の出どころは厚労省の妊婦さん向けのパンフレットによるものでしょう。それにはリステリア菌による食中毒が妊婦で生じやすく胎児に影響があることもあるので、ナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン、パテなどは避けるように書いてあります。実際はどうでしょう、まず日本で作られている大手の会社ものはきちっと決められている検査をしているので、大丈夫です。また日本で作られている乳製品も材料の牛乳を加熱処理されているので、心配不要です。安心して食べて下さい。ただ、輸入ものは不明です。

7.妊婦健診が始まったので、葉酸のサプリメントを飲み始めた方がよいでしょうか。

 妊娠初期に葉酸が不足すると、赤ちゃんに二分脊椎などの神経管閉鎖障害という先天性異常の発生率が増加します。これは日本では少ないものでしたが、少し増えています。ですから葉酸の摂取は必要ですが、ただ、妊娠1か月以上前から妊娠3か月(12週未満)までと言われているので、母子手帳をもらってから葉酸取れば良いということではありません。また、葉酸の過剰摂取も悪影響があるので、サプリメントからの摂取の場合、過剰となるので摂取量にも注意が必要です。食事で葉酸を多めに含むただ、貧血を防ぐためにも必要ですから、摂取するのはよいことです。

この記事を書いた人

小泉基生
医療法人社団EVEウィミンズクリニック理事長・院長
 日本産婦人科学会 産婦人科専門医
 日本専門医機構 産婦人科専門医
 日本臨床細胞学会 細胞診専門医
 日本臨床細胞学会 教育研修指導医
趣味:釣り、料理、パソコン(ネット)
現在はオートミールで体重管理中

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